その笑顔が見たい
12時過ぎの混み合った時間に比べると13時半を過ぎたこの時間は社員はまばらだ。
その代わり、いつもは厨房にいる女性たちがホールに何人も出てきていて、未使用のトレーの片付けや各テーブルの調味料の補充をし始めている。
だから厨房の中は昼時の忙しい時間よりも少ない人数で作業をしていた。
メニューはほとんどが完売。
麺類とおにぎりやカレーなど定番のメニューだけが残っていた。
トレーを持ってカレーの窓口へと二人で向かう。
「今日はおまけ無さそうだね」
子供みたいにガッカリしている桜木の横顔。
「あのなー」
二十六歳にもなる男がおまけが無くてガッカリするなよと思いながらも憎めない。
「だっておまけしてくれるおばちゃんがもういない」
「顔、覚えてんの?」
「そりゃそうだよ。いつも同じおばちゃんだよ」
「よくわかるな」
カレー二つと厨房に声をかけ、カレーが出てくるまで桜木のガッカリ顔を拝む。
「はぁ、残念」
あからさまに肩を落とす桜木がおかしくなって思わず吹き出した。
「あ、翔ちんが笑った。傷つくーーー」
「笑ってない」
と否定しながら、その姿がさらにおかしくて肩を揺らしながら笑ってしまった。
「笑ってんじゃん!」
ムキになる桜木に大笑いする。
二人の前に注文したカレーの皿がポンポンと出されたと同時に「クスクス」という可愛い笑い声が聞こえた。