その笑顔が見たい
桜木は普段は「ぼんやり」しているように見えるが、洞察力はなかなかのものだ。
もしかしたら「ぼんやり」は仮の姿なのかもしれない。

「見とれてねーよ」

カレーを乱暴に何口も口にかき込んだ。
途端、むせた。


「ゲホゲホ!」


「あー、大丈夫?ほら、水」

目の前に出された水を渡す桜木の目がニヤニヤと笑ってる。


「翔ちん、分かりやすい」


「何が」


「エリカ嬢に、なびいたなんて嘘だよね、やっぱり」


「なびくか」


「エリカ嬢のわかりやすいアプローチを見事に交わしているもんね」


「桜木」


「ん?」


「お前は普通に人の名を呼べないのか」


「あー、翔ちんはすぐにそうやって話をごまかす。でさ…」


そのあと、どんな言葉が口をつくかわかってる。


「それ以上、喋るな」


「えーーー!」


「職場で話すことじゃない」


「食堂だけど」


「余計にダメだ」


「じゃあさ、今夜飲みに行って、そこんとこ詳しく」



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