その笑顔が見たい

「また漫画?いいなぁ、一年生は気楽で」


たいして羨ましくも思ってなさそうに夜空を見ながら呟いていた。


「三年生は大変ですねぇ」


だから僕も軽口をたたく。
その言い方がふざけていたからか、葉月はプクっとほっぺを膨らませて


「可愛くない!ついこの間まではーちゃん、はーちゃんって私の後をずっと追って来てたのに。だいたいどうして翔ちゃんも聡も葉月って呼び捨てしてんのよ。もう!」


いつの話をしているのやら。
葉月の後を追っていたのなんて小学生の頃だ。しかも低学年。
そのあとは葉月が僕と聡の後を追って来ていたんだろう。
その頃から呼び捨てだってしてたじゃん。
とは言わずに、さらに葉月をからかう。


「可愛くなくて、すみませんねー」


下顎を出してアニメちっくな言い方は、自分でやっておいて憎たらしい仕草だと思う。
けれど葉月とこうした掛け合いが僕は楽しいんだ。


「生意気」

コツンとおでこを突っつく葉月が「あれ?」という。
微妙な角度で弾くから全然痛くない。

ほらね、背はとっくに僕の方が高くて体格だって徐々に大人に近づいてきている。口だって達者になっているのに、まだ僕にお姉さんぶってる。

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