その笑顔が見たい
「葉月は高校も一度辞めて働いたんだ」
「まぁ…」
その言葉に親父は新聞を折りたたんで庭を見つめていた。
庭から見える葉月んちがいたお隣の家には、あの日から一年後に会社をリタイヤした初老の夫婦が移り住んでいる。
子供達が独立してるらしく二人で仲睦まじく暮らしていた。
葉月が学校を辞めざるをおえなかったと知って母親は涙ぐんでいた。
女の子が欲しかったと俺の前で無神経にも言い放つくらいの母親だ。
葉月のことも娘のように可愛かったんだろう。
その娘が親の借金のせいで高校をやめ、働いていたと聞かされれば胸が痛むに違いない。
母親が俺の目をまっすぐに見た
「翔太、はーちゃんに会ったら…」
「わかってる」
やっぱりうちの両親も俺と同じ気持ちだ。
もうこれ以上、待つのはよそう。
葉月を探し出すつもりで会いに行こう。
そう心に決めた。