その笑顔が見たい
第五章


月曜日。
いつもなら気だるく感じる週初めなのに、今日ばかりは早く会社に行きたくてウズウズしていた。食堂に行くには午前中の外出を早めに切り上げてくるかキャンセルするか。
何日も前からアポを取っている会社にキャンセルは考えられないなと早めに切り上げられるような算段をする。

出社も普段より30分早く着いた。
普段だって遅いわけではない。始業30分前には席についている。
だから今日は1時間も早く出社してきたことになる。
すでに柳さんは席にいて、まだ人がまばらな営業部は蛍光灯すら数カ所しか点いていない。

「おはようございます」

「おはよ、早いな」

書類に目を通していた視線を僕に向ける。
爽やかな笑顔は朝から健在な人だなと男ながら惚れ惚れしながら通り過ぎ、席に着くとカバンから必要なものを取り出す。パソコンを立ち上がるまで、今日の予定を確認しようと手帳を開くと、柳さんから声をかけられた。

「野村、ちょっといいか」

席から立ち上がりながら、タバコを胸ポケットに入れる。

「はい」

そのままフロアの端っこにある喫煙所へと向かった。
まだ誰もいない喫煙所は小さな部屋になっていて、普段よりはマシだがすでにタバコの匂いがする。

「一本だけ付き合え」



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