その笑顔が見たい
「葉月が嬉しくなるのは調理場のみんなを見て?」
「ん?そうだけど」
「…」
「ん?」
「俺を見れて…じゃないの?」
一体、何を言い出したのか自分でも照れる。
とっさに振り向いて、ぽかんと俺を見てる葉月の顔をまともに見れなくて手元にあったクッションを投げた。
「自分で言って照れないでよ」
クッションは投げ返され、立ち上がった葉月が戦闘モードになる。
クッションの投げ合いの最後は、俺の顔にまともに当たった。
痛くもないのに、わざと倒れてうずくまる。
「イテ!鼻血出た」
「え、嘘、そんなに強く投げてないよ」
慌てる葉月がベッドに上がって来たんだろう。スプリングに重力がかかる。
仰向けになって手の平で顔を覆っている俺を覗き込んだのだろう。
照明に影ができて、目をつぶっていてもなんとなく気配を感じる。
顔を覆ったままの手を剥がそうと葉月がさらに俺に近づいた時、手を顔から離して目を開けた。
ニヤ!
心配そうに覗き込んだ葉月の目がみるみるうちに小さな怒りの炎を灯していく。
「もう!嘘つき!」