その笑顔が見たい
プンプンと思っている心の声が今にも聞こえて来そうなくらい頰を膨らます葉月が離れる前に、腕を引っ張って自分の胸に収めた。
俺の上に、葉月が重なった。
自分の腕を葉月の細い背中にそっと回し抱きしめる。
「あ…」
葉月の小さな声が漏れた。
自分の心臓の音なのか、葉月の鼓動なのか、重なった体から同じ速さの脈が流れていた。
「ずっとこうしたかった。葉月がいなくなって葉月の存在が大きかったことに気がついたんだ。いつもそばにいて、いつだって俺や聡を守ってくれ、笑ってた葉月が消えた時、どうしようもないくらい辛かった」
こんなことを言うつもりはなかった。
葉月に会えればそれで良いと思ってた。
けれど葉月が目の前にいて、葉月を抱きしめてしまったら自分の想いが自然に溢れて来る。
「うん」
葉月の声が胸に響く。
息遣い、体温、香りがそばにあると実感してしまったら、もう二度と離したくなかった。
今まで苦労した葉月を自分の腕の中で甘やかしたいと思った。
「探そうにも探せなくて、時間だけが過ぎていっんだ。もう諦めてた。忘れたつもりだった。けど今目の前に葉月がいるって思ったら…もう離せない、離したくない」
葉月の体がピクッと硬くなった。
「翔ちゃん」
その反応に違和感があり、葉月を抱きしめる手に力を入れる。
密着した体と体。
思いは溢れるばかりだった。