その笑顔が見たい

きっと気持ち悪いくらいニヤついていただろう。
今朝、葉月と電話でやりとりした通り、お昼は食堂へ向かう。
もれなく桜木と宮崎とその友達もくっついてくる。
このメンバーでの食事も考えものだなと思い始めていた。

食堂に着くと混んでいる時間帯で、どのメニューも列が長くなっていた。

「翔ちん、何食べる?」

「なんでもいいよ」

「今日はB定食なんていかがですか?麻婆豆腐と卵スープに中華風唐揚げ」

ここまで食堂のメニューを把握していることに妙な感心を覚える。

「それでいいよ」

桜木の温度差がある返事をすると宮崎たちは違う列に並んだ。
ボリュームのある定食は好まないらしい。
いつも通り桜木が後ろに並ぶ。


「今日はどんなおまけかなー」


桜木のウキウキしている姿を見ていたら、昨日、葉月から教えてもらった「おまけの裏話」を思い出した。


「楽しみだな」


「えっ?」

桜木の間抜けな顔が面白い。

「なんだよ」


「とうとう翔ちんもおまけの魅力に気がついたかー」


「ちげーよ。おまけしてくれる理由がわかったんだよ」


「そうなの?誰に聞いたの?ね、ね、誰が教えてくれたの?」


桜木の言葉を無視したまま、列を前に進んで行くと調理場の様子がはっきり見える位置まで来た。
すると窓口の女性が俺を見て、すぐに後方にいる女性に合図を送った。

その後方の女性が横にいる女性に、そのまた女性が後ろにと伝達ゲームのようになっている。
意識して見ているとおかしくて笑ってしまう。

自惚れるわけじゃないけれど、それは調理場が明るく楽しんで作業しているようにも見えて、葉月が嬉しいと言った意味がわかった。


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