王様と私のただならぬ関係
 ……だから、その名前、やめてください、と思ったが、自分もすっかり明日香を明日香、と呼びながら、エサをやっていた。

 たどり着いたリビングで、水槽を見ながら秀人は、
「いっそ、ピラニアを入れてみようか」
と呟いている。

 それはさすがに――

「……死にます」
と言ったあとで、

「なにか飲みますか」
と溜息まじりに訊いてみた。

 そういう訊き方になってしまったのは、秀人を疎ましく思っているからではなく、自分がどうしたいのかわからなくなってきたからだ。

 秀人は何処となく、落ち着かなげに見えた。

 此処に居て、いいのだろうかな、という感じだ。

 いいんです。

 いいんですけど、でも――

 好きかと問われたらわからないですけど、と思いながら、お茶を出す。

 っていうか、貴方、そもそも私のこと好きなんですか? と思っていたが、やはり聞けなかった。

 都合のいい女だと思われているだけのような気がする。
< 119 / 298 >

この作品をシェア

pagetop