王様と私のただならぬ関係
 結婚するのに、ちょうどいい女だと、と思ったあとで、

 ……いや、ちょうどよくないな、と気がついた。

 昼間のみんなの発言を思い出したからだ。

 この人に似合うのは、女優やタレントのように可愛らしいお姫様だ。

 なんだかおうちもいいようだし、私とは釣り合わないような……。

 たまたまそこに居て、ちょうどよかった、以外に、この人が私をいいと思う理由なんてあるだろうか?

 ああ、せめて、私も、ビーナス像のようだったら。

 いや、半裸で立っとけとか言われたら、嫌なんだけど、と思いながら、二人でラグの上のローテーブルで紅茶を飲んでいた。

 ……なにかしゃべってください。

 小話でも、いつもの全然役に立ちそうにもない雑学でもいいですから、と思っていると、そのうち、

「明日香」
と秀人が呼びかけてきた。

 は、はいっ、と顔を上げる。

 秀人はなにか話題を探しているような目をとしていたが、やがて、
「あんまり、廣田を責めるなよ」
と唐突に言ってきた。
< 120 / 298 >

この作品をシェア

pagetop