王様と私のただならぬ関係



「調子に乗っている」

 いきなり声がして、うわっ、と明日香は振り向く。

 乗り込んだ広いエレベーターの隅、階数ボタンのところに大地が居たからだ。

 乗ってくるとき死角になる場所ではあるが、いつも気配が粒子で飛んできそうな大地がそこに居て、気づかなかったことに驚いた。

「今、聞こえたんだ。
 三田静と話しているのが」

 ええっ、と明日香は声を上げる。

「あの、三田さんの話は……」

「誰にもする予定はない。
 彼女があの薄気味悪い植物みたいな男とキスしたとか」

 特に興味もない、と言う。

 いや、あの人が植物なんじゃなくて、植物の研究してるだけなんですけどね、と思っていると、
「葉月が三田さんと浮気する、とでも言うのなら別だがな」
と言ってくる。

 明日香、と大地が呼びかけてきた。
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