王様と私のただならぬ関係
「す、すみませんでした」
人気のない夕方の社食。
その隅で秀人に珈琲を奢りながら、明日香は畏まり、彼の前に座っていた。
「同期ですから、ご存知でしょうか。
如月せんぱ……
如月さんって、ちょっと変わってて」
私、付き合った覚えもないんですが、と遠慮がちに告げる。
大地は、ちょっとどうかと思う言動も多いが、憎めないところもあるので、あまり悪く言いたくはなかったからだ。
意外にくつろいだ様子で座る秀人は、それを聞いたあとで、
「いや、別にいい。
ちょうどよかったから」
と言い出した。
「ちょうどよかった?」
と訊き返すと、
「如月が見合い断ったら、あの話、こっちに来るところだった。
どうやら、相手が切羽詰まっているらしくて」
と言う。
「どうも、専務の娘らしいんだが」
「……玉の輿じゃないですか」
「じゃあ、お前に譲ってやろう」
と秀人は無茶を言う。