王様と私のただならぬ関係
「……明日香。
 何故、後退する」

「えっ?
 な、なんとなくです」

 そうか、と言って、秀人が少し前に出た。

 思わず、また下がってしまう。

 髪を引っ張られる感じになって、
「いたたたた……」
と頭を前に下げた。

「待て、明日香。
 逃げてないか? 俺から」

「き、気のせいですよ」
と言いはしたが。

 いや、確かに逃げている、と自分でも思っていた。

 手を離した秀人は腕を組み、自分を見下ろしてくる。

「俺が嫌いか」

「き、嫌いではないです」

「じゃあ、いいよな」

 なにがですか?

 どういいんですか?

 逃亡してもいいですか?

 いつの間にか、そう思っている自分に気がついた。

 ふいに静の顔が頭をよぎる。
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