王様と私のただならぬ関係
 あんな真摯に思い続けていた彼女ではなく、自分が秀人と付き合っているのだから、その求めには応じるべきだ。

 ――と、頭ではわかっているのだが。

 なんとなく、一定の距離を保って逃げてしまう。

「……明日香」

「だ、大丈夫です。
 覚悟を決めます」
と明日香は拳を作る。

「おっ、お覚悟っ!」

「……いや、それだと俺がやられる感じなんだが」

「大丈夫ですっ。
 頑張りますっ」
と機械のように繰り返しながら、今にもドリブルでもしそうな腰がひけた前傾姿勢で構えてしまう。

 秀人が溜息をつき、
「いや、いい。
 今日はよそう」
と言って、ぽんぽん、と頭を叩いてきた。

 帰り際、靴を履きながら、秀人はこちらを見ずにぼそりと言ってきた。

「大丈夫だ。
 まだ、壁に埋めたりはしないから」

 ……まだ!?
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