王様と私のただならぬ関係
 



「葉月、今日は遅かったわねー。
 明日香ちゃんのところにお泊まり?」

 翌日、研究室の入り口で、日野が笑いながら言ってきて、秋成が、なにっ? と振り返った。

「いや。
 九時には帰った」

 まだ、そういうあれじゃないから、と言うと、
「まあ、健全」
と言う。

 いや、別に健全になりたいわけじゃないんだが、と思っていると、
「葉月はそういうこと手慣れてないから。

 女の子は待ってるものよ。
 自分からは言わないでしょ」
と言われ、

 いいや、あいつは待ってない、と思う。

 あいつ、本当に俺のこと好きなのか? あの逃げっぷり。

 不安になるには充分な形相だった。




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