王様と私のただならぬ関係
 



 どうしよう。

 昨日、緋沙子ちゃんに日下部さんが、葉月さんの彼女だって聞いて、謝らなくちゃって思ってたんだけど。

 言い出せない。

 ってか、殴られそう!?

 よろりと寝不足そうな明日香が行ってしまったあと、秋成が現れる。

「おはよう。
 今日も綺麗ですね、静さん」
といつものように照れもせず、言ってくる。

 秋成の偉いところは、若い娘だけにではなく、どんなおばあちゃんにだって、こういうセリフをさらっと言ってしまうところだ。

 緋沙子に言うと、
「それ、感心するところじゃないって。
 単なる際限のない女好きってことでしょ」
と冷ややかに言っていたのだが。

「ひ、廣田さん、ちょっと」
と呼び止める。

「あの、日下部さんが元気ないみたいなんだけど」

 あー、そうなの? と今、明日香が消えたエレベーターの方を振り返りながら言う。
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