王様と私のただならぬ関係
「ところで、珈琲代、お前が出したな」

「あ、はい。
 これしきでは申し訳ないのですが。

 今、かばっていただいたお礼に」
と言うと、秀人は白衣の下、ズボンのポケットを探り、札を二枚出してきた。

「俺が出す」
と言う。

 いや……珈琲一杯千円って、何処の専門店ですか。

 貴方、社食の珈琲代も知らないのですか、と思ったが、社員証で払えるので、金額は知らないのかもしれないと思った。

「いえ、そんなことしていただいては」
と言うと、

「なんでだ」
と秀人は言う。

「お前、俺と結婚するんだろ?
 付き合っているのなら、男が出すものだと聞いたぞ」

 いや、聞いたぞって……。

「あのー、結婚って」

 それは確か、あの場の言い逃れだったはずだが、と思いながら訊き返すと、

「お前のことはよく知らないが、見合いだと思えば、出来ないこともないはずだ。

 あれも出会ったばかりの相手とすぐに結婚するという、よくわからない行事だからな」
と言ってくる。

 はい?
< 17 / 298 >

この作品をシェア

pagetop