王様と私のただならぬ関係
 




 秀人の車に乗った明日香は、ぼんやり夜の街を眺める。

「気にしなくていいんだぞ」
と言う秀人の言葉に振り返る。

 秀人は前を見たまま言ってきた。

「俺がちょっと焦っただけだ。
 廣田がお前に気がある風だったから」

 そう言ってくれるが、明日香は、すみません、と謝った。

 窓の外を見ていると、明らかに、援助交際風のカップルが歩いていた。

「ヤンキーやアバズレの方が立派な方に思えてきました。
 吉原の方はなんと立派な……」
と呟いて、

「落ち着け」
と言われてしまう。

「今日も本屋さんの近くでナンパして来られた方に、申し訳ないな、と思ってしまいました。

 私のような欠陥品にお声をかけてくださるなんて」

 秀人の期待に応えられないというプレッシャーにより、完全に錯乱していた。

「待て、明日香」
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