王様と私のただならぬ関係
「あのとき、此処で、海の水をくむ柄杓の話をしたとき、お前に一緒に見に行こうと言いたかったのに言えなかった。

 きっと、あのときから、もう好きだったんだな」

 どうしよう……。

 ちょっと泣きそうなんですけど……。

「お前が俺のこと好きじゃないから、出来ないんじゃないかと思ってけど」
と泣きかけている明日香の顔を見、秀人は少し笑った

 ――ように見えた。

 相変わらず、表情はあまり変わらないが。

「そうじゃないんならいい」

 そう言って、キスしかけて、秀人はやめた。

「帰ろうか」

 手をつないだまま、車まで歩いて戻る。

 冷たい夜風にさらされながら、街灯の灯りに照らされた秀人の顔を斜め後ろから見、明日香は思う。

 どうしましょう。

 今なら逃げずに出来そうな気がしてきたのですが。

 うーむ。
 でも、今なら出来そうですっとか自分で言うのも変ですっ。

 どうすればっ!?
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