王様と私のただならぬ関係
え? うちに来るか?
……今、私の目の前でなにが起こっているのだろうかな、と明日香は、ぼんやり思っていた。
さっきまで、王様の前にうやうやしく珈琲を差し出し、この人に、夕方の社食の煮詰まった珈琲を奢るのは、かえって、ご無礼だな、とか呑気に思っていたはずなのに。
結婚?
は?
なんでしたっけ? 結婚って。
結婚?
王様に煮詰まった珈琲を差し出した罪で?
動揺することも、放心することも出来ずに、固まっていたせいで、承諾したと思われたのか。
王様は、淡々と話を進めて来られる。
「独り身で居ると、いろいろうるさいことを言って来られるからな。
結婚した方がすっきりしていい」
お前もそうだろう、と決めつけるような口調で言ってくる。
結婚って、すっきりするためのものでしたっけ?
と思ったあとで、明日香は、
まあ、本気ではないと思うのだが、万が一にも、この王様らしきものと結婚するのなら、此処は追求しておくポイントのようだ、
そうぼんやり思いながら、口を開いた。