王様と私のただならぬ関係
 


 帰宅したあと、秀人は明日香に電話した。

 四、五回、鳴らしたところで、明日香が出る。

『着きました?』
と訊いてきた。

 少し話したが、大地が下に居たことは黙っておいた。

 なんだか告げ口するようで悪い気がしたからだ。

 だが、万が一のときのことを考えて、
「俺以外の誰が来ても、玄関、開けるなよ」
と言うと、少しの間を置き、

『はい』
と言う。

 ちょっと嬉しそうにも聞こえたが、まあ、自分は感情を表すことも、人の感情を読み取ることも苦手なので、それが正確なのかは、よくわからない。

「じゃあ、おやすみ」

『おやすみなさい』
と言う明日香に、

「もやしのヒゲ、栄養あるぞ」
と言って電話を切った。

 今日はよく眠れそうな気がする、と思いながら、青い光の中で、ぷかりぷかりと泳いでいるクラゲを見つめた。






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