王様と私のただならぬ関係
 



 研究棟行ったけど、廣田さんと小笠原主任にしか会えなかったなーと思いながら、明日香は本館に戻り、エレベーターに乗った。

 弟切草の意味を仮面をかぶっていない状態の秀人に訊いたら、教えてくれるのだろうか、とちょっと思っていたが、

 ……恐ろしい答えが返って来たら嫌だな、とも思っていた。

 廣田には、秀人を信じると言ったし、信じるつもりだが。

 自分がとてつもなく恐ろしいことをやらかしていて、その報復ということもありうる。

 そんなことを考えていたせいか。

 他には誰も乗っていないはずのエレベーターで、後ろでなにかの気配を感じた気がして、バッと振り向く。

 私の背後に立つなっ、くらいの勢いだ。

 だが、後ろの鏡に映っていたのは自分だけだった。

 むしろ、驚いた顔で映っている自分の顔に驚いた。

 い……いかんいかん。

 乙女にあるまじき、すさまじい形相だった……。
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