王様と私のただならぬ関係
 はにかみ……とその言葉を噛みしめている明日香の後ろで、
「花はこれで最後だ」
と秀人は言った。

 そのとき、エレベーターがこの階に着く音がした。

 ぎょっとして、
「はっ、入ってください」
と腕を引いたが、秀人は入らず、

「考えてみたんだ」
と言いながら、お面を外す。

 うっ。
 やっぱり美しいですっ。

 この顔に惑わされているつもりはないのですがっ。

 でも、きっと、如月先輩や廣田さんがこんな顔をしていても、こんなにも惹かれてないな、と思っていた。

 エレベーターから降りてきたのは、いつぞやのOLさんだった。

 彼女の目は秀人の手にあるお面を見ている。

 毎度、廊下でなんかやってて、すみませんっ、と思いながら頭を下げると、向こうも下げてきた。

 秀人も通り過ぎていく彼女をなんとなく見ている。

 見ないでーっ。

 誰も見ないでーっ。

 綺麗な人は特に見ないでーっ、と思いながら、秀人の袖を引く。

「とっ、ともかく、入ってくださいっ」
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