王様と私のただならぬ関係
ピンポンといつもは軽快に感じるチャイムの音を聞いたとき、明日香は慌てふためいていた。
上がるわけじゃないと聞いていたのに、片付けてしまったーっ。
むしろ直すのは化粧化粧化粧っ!
ああっ。
でも、お待たせしてはっ。
なんだかわからない小さな緑の人がいっぱいやってきて、成敗されそうだっ、と思ってしまう。
秀人が壁面緑化の研究をやっているチームに居るからだろう。
息を切らして、ドアを開けた明日香は、
「す、すみません。
化粧直してません」
と動揺のあまり、口に出して言ってしまう。
だが、秀人は、
「大丈夫だ。
お前の顔など注視していない」
と言ってきた。
そこで、よかったです、と言っていいものなのかどうなのか……。
少しは私に興味を持ってくれませんかね、とさっさと行こうとする、スーツ姿の秀人を見ながら、思ってしまった。
もしかしたら、気にするなという意味で言ってくれたのかもしれないのだが。
この人の場合、本気っぽいから怖いよな、と思いながら、秀人の後についてマンションのエレベーターへと向かった。