王様と私のただならぬ関係
「途中で逃げてもいいんだぞ」
と言ってくるので、

「……ほんとに?」
と彼を見上げて訊くと、

「いや、キレるかもしれないが」
と言ってくる。

 えーっ、と思っていると、

「キレたっていいんだ。
 そうやって、日々、積み重ねていくんだよ。

 いろんな思い出を――」
と言いながら、腰を浮かし、明日香の両手を持ったまま、口づけてきた。

 いや……逃げていいと言いながら、ガッチリ握ってますよね、と思う。

 だが、それ以上逆らわずに、秀人の長い口づけを受けた。

「愛してるよ……明日香」

 愛してると正面切って言われたのは、初めてな気がする。

 どうか。
 麻酔のように甘い言葉を降り注いで。

 私がそれに酔っている間に終わらせて――。

「顔が強張ってる……」
と頬に触れて秀人が言ってくる。
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