王様と私のただならぬ関係
 



「今日は葉月さん、なんか切羽詰まった感じに急がしそうだったなー」
と社食で秀人と別れたあとで、自動販売機に立ち寄り、呟くと、若菜たちが、

「愛よね、愛」
と言ってくる。

「私たちには、全然その表情の差がわかんないのよ」

「あ、でもさ」
と真美が言った。

「葉月さんが笑ってるとか、忙しそうだとかはわからないけど。

 明日香を見てるとき、ちょっと微笑ましげっていうか、空気が柔らかいなあとはずっと思ってたよ」
と言われる。

 ええーっ?
 そうでしたかっ?

「ど、どっちかって言うと、しょうのない奴だって顔でいつも見られてる気がするんだけど」
と言って、

「ああ、それもある」
と二人に声をそろえて言われてしまう。

 うう……。

 でも、そうか。
 私自身は好きなのかどうなのか、長らく疑問に思っていたけれど。

 みんなの方が先にわかっていたわけか。

 ふと気づくと、むき出しの渡り廊下のところで、大地が専務と話していた。
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