王様と私のただならぬ関係
 



 ドアを開け、廊下を覗いた貴継は、
「明日実(あずみ)、居ないじゃないか」
と文句を言ってくる。

「いや、ほんとに彫像じゃないんですから、動かないわけないじゃないですか」
と自分も貴継の大きな身体の陰から見ながら言った。

「女の部屋を訪ねて来たんだろ?
 外見は幾ら綺麗でもただの男じゃないか」
と貴継は勝手に話をまとめ、中に入っていってしまう。

 後について入りながら、
「貴方に話すと、途端に、ロマンがなくなりますねー」
と言うと、

「俺が綺麗な男を見てロマンを感じたら不気味だろ?」
と素っ気なく言ったあとで、

「今日はどうする?
 何処か食べに行くか?

 それとも、バーナーで炙りサーモンとか作ってやろうか?」
と訊いてきた。

「あ、いいですね。
 炙りサーモン」
と笑う。

 だが、どのみち、買い物に出ねばならないので、二人でまた廊下に出たのだが、やはり、彫像は居なかった。







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