王様と私のただならぬ関係
「貴方でも、人のことを可愛いと思ったりするんですか?」
と言うと、

「俺の心は彫像じゃないぞ」
と秀人は言ってくる。

「お前の一挙手一投足すべてに振り回されている」

 いや、あの……全然顔に出ていませんが、と思っていると、
「そういえば、最近、あんまり、お前を可愛いと思わなくなったな」
と言い出した。

 ええっ?

 ウエディングケーキで撲殺したあと、入刀し損ねたナイフで喉を突いて死のう、とまで一瞬で思い詰めると、大真面目な顔でこちらを見、

「最近は可愛いというより、面白い」
と言ってくる。

 すみません。
 思ったままを言うのはやめてください……。

「でも、引っ越すときには、お隣さん以外にも、あのOLさんにもご挨拶しときたいです」

 此処から去ることを少し寂しく思いながら、明日香はそう言った。
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