王様と私のただならぬ関係
 初めて秀人が押しかけてきたときのこと。

 初めて、秀人が白いお面をつけてきたときのことなどを思い出し。

 ある意味、思い出深い場所だからな……と思っていた。

 そして、はた、と気がついた。

「はっ、葉月さんっ、秀人が浮いていますっ」

 朝まで仲良く泳いでいた明日香と秀人だったのに。

 今、見たら、秀人だけがぷっかり浮いていて、明日香はその下で、ゆったり泳いでいた。

「……やっぱり、ピラニアなんじゃないのか、明日香?

 っていうか、お前、なんで、金魚が秀人で、俺が葉月だ」
と文句を言われ、

「あっ、貴方が名前つけたんじゃないですかーっ!」
と叫び返す。

 部屋の中はもう半分くらいダンボールで埋まっていた。

 式場もまだ決まってはいないが、新婚旅行だけは秋と決まっている。

 二人で水をくむ柄杓(ひしゃく)を見に行くのだ。

 おばあちゃんに習って焼いたケーキを持って――。
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