王様と私のただならぬ関係
「いや、そうじゃない。
単に、お前に、一緒に北斗七星を見に行こうと言いたくないなと思ってしまうのは何故なのかなと考えていて……」
と秀人が言ってきたあと、
「いや……行きたくないんなら、別に誘ってくださらなくていいんですけど」
と明日香は言った。
二人で遠方に出かけるとか緊張するし、別にいい、と思っていたからだ。
だが、秀人は、そう言ったあとで、こちらを見たまま、沈黙していた。
相変わらずの無表情だ。
しかし、何故だか、秀人が動揺しているように思えた。
表情、一ミリたりとも動いてないんだが……。
唇も眉も、それこそ彫像のように、ピクリとも動かないのに、どうしてだか、秀人が慌てているように思えた。
思わず、じーっと見つめてしまう。
秀人はまったく表情を変えないまま、背を向け、
「……行こうか」
と言ってきた。
水ももう充分たまったようだ。