王様と私のただならぬ関係
「50人のダナオスの娘たちが、無理やり結婚させられそうになったアイギュプトスの50人の息子たちを初夜に殺す話だったな。

 夫を殺した娘たちが、地獄に落とされて、底のない壺で、永遠に水をくまされる――

 ところで、日野が式はいつなんだと訊いてきたんだが」

 ……神様、この人は壊れています。

 何故、新婚初夜に夫を殺す話をしたあとで、私たちの結婚式の話を始めるのですか。

 今、まさに、無理やり結婚させられそうになっている私に向かってっ!

 殺しましょうかっ、初夜にっ、と思いながら、明日香は思わず、チキンを切っていたナイフを見つめる。

「そういえば、シャワーのヘッド、カルキで固まって、水が出なくなってたんだよ。
 学会で行ったイタリアで」

 そして、話が突然、一時間前まで、平気で戻りますっ。

「ほら、イタリアは硬水だからって、さっき言ったろ」

 ……さっきっていうか、一時間近く前ですよねー、と力なく思う。

 ゆったりコース料理が出てくるので、もうあれから小一時間くらい経っていた。
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