王様と私のただならぬ関係
 


 食べてる。

 ……食べてる。

 動いてる。

 水とか飲んでる。

 明日香は離れた席に居る秀人をずっと眺めていた。

「明日香……。
 幾ら物珍しいからって、ガン見するのはやめなさい」
と緋沙子にたしなめられる。

 ああ、すみません、と気づいて、緋沙子を振り向いた。

「いや、なんかこう、生きてる感じがしない人だったんで。
 しゃべったり動いたりするんだなーと思って」

 しかし、食べたり飲んだり、生き物らしいことをしたら、人間っぽくなるかな、と思っていたのだが。

 お育ちがいいのか、立ち居振る舞いも美しく、何処までいっても、葉月秀人は天上人のようだった。

「いや、あんた、珍獣じゃないんだから」
と言った緋沙子が、明日香の後ろを見、

「あら、大地《だいち》」
と笑いかける。

 思わず、明日香は、ひっ、と身を竦めた。

 緋沙子の同期の如月大地《きさらぎ だいち》だ。

 みんな格好いいと言っているが。

 いや……

 そうですか?

 ……そうですか? と明日香は思っていた。
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