添い寝は日替わり交代制!?
5.ここに住みませんか?
「ど、どちらにしても困ります。
私、友達とルームシェアしていて家賃だって……。」
ルームシェアの家賃を払わないわけにはいかない。
友達の陽菜と折半して、お互いにいっぱいいっぱいの生活だ。
ルームシェアを『やっぱりやめます』では、無責任過ぎる。
2人で払わなければ、陽菜だってあそこには住めない。
しかも……佐々木課長のマンションの家賃を心春に折半できるわけがない。
いったいいくら払わなきゃいけないんだって思うだけでめまいがする。
「こちらの家賃は心配しないでください。
どうせ元々1人で住んでいたわけですし。
私の希望で住んでもらうわけですから。」
にこにこ笑う佐々木課長にありがた過ぎる提案をされ、なんだか逃げ場がない。
「でもやっぱりルームシェアしている友達に悪いので……。」
「では友達が良ければ住んでもいいってことですか?」
「え?」
そういうことになるのかな?
「ほら。聞いてみて下さい。」
「え?今ですか?」
「善は急げというでしょ?」
「はぁ。」
押し切られた感じでカバンから携帯を出す。
にこにこしたまま待っている佐々木課長に見られていてかけないわけにもいかず、陽菜に電話をかけた。
「もしもし?陽菜?
あのね。
私の会社の人が一緒に住まないかって…。
困るよね?迷惑だよね?
家賃払えなくなっちゃうし。」
心の中で困るって言って!と願っていたんだと思う。
だって佐々木課長のマンションに住むなんて!!!
『そうなの?
あのね……実は彼が同棲したいって言ってたの。
でも私も心春がいるからって断ってたんだ〜。』
「そ、そうだったんだ……。
気づかなくてごめんね。
あ、あの、また詳しく話そうね。」
『うん。分かった〜。』
そうだったんだ。
私、邪魔者だったんだ。
悲しくなりつつも顔を上げると眉尻を下げた悲しそうな佐々木課長と目が合った。
「すみません。
私のせいでつらい思いをさせてしまいましたか?」
佐々木課長のせいじゃない。
ううん。せいじゃないどころか、邪魔者のままでいるところを救い出してくれた。
眉尻を下げたままの佐々木課長が告げる。
「先ほども言いましたがここの家賃はお気になさらずに。」
「それはさすがに悪いですから……。」
「それに食事も付けますよ?
好物があれば教えておいてください。」
佐々木課長の申し出に思わず吹き出してしまう。
「そんなご機嫌取りしなくたって。」
「やっと笑いましたね。」
ふわっと安心したように笑う佐々木課長にトクトクと温かい思いが心の中に広がっていった。
良かった。こういう時に1人じゃなくて。
佐々木課長もこういう気持ちを言ってるのかな。
そしたら私にだって佐々木課長との同居は必要なことなのかもしれない……。