添い寝は日替わり交代制!?
6.添い寝しますか?
心春はぼんやり考えていた。
いつもの佐々木課長みたいだけど、嫌じゃないって………。
これじゃいつもの佐々木課長は嫌だって言ってるようなものだよね。
どうしてもっとマシなこと言えないんだろう。
酔っていても佐々木課長はテキパキと片付けをして「先にお風呂へ行ってきてください。これよろしければ。」と、バスタオルと着替えらしきものを渡された。
片付けはほとんど手伝い程度しかやれなくて申し訳なくなってしまう。
それでもそれよりももっと早急に解決しなきゃいけないことがあった。
どうしたらいいんだろう………。
だって添い寝って………。
佐々木課長が「やましいことは何も無い」って言うんだから何もないんだろう。
だからって、一緒に寝るなんて………。
お風呂から出ると体を拭き、着替えを手にした。
え………。これって………。
「あの……。これ……。」
着ていいのかものすごく迷った。
何故なら着替えは女性物のパジャマだったから。
彼女……今はいないって言ってたから昔の彼女の物?
でも、サイズは心春にぴったりな小さなサイズ。
勝手なイメージだけど、佐々木課長の彼女ってスラッと背の高いモデル体型の人だと思う。
じゃぁなんだろう。
佐々木課長なら……隠し子とかありえる。
中学生くらいの娘がいて、みたいな。
散々の脳内会議の末に、パジャマを着て佐々木課長の前に行くことにしたのだ。
「あぁ。良かった。
サイズよさそうですね。」
「これ……どなたのですか?
お借りして良かったんですか?」
「え?中島さんのですが。」
「はい?」
「中島さんのです。」
いや、だから、聞こえなくて聞き返したわけじゃなくて、内容が信じられなくて聞き返したんです!
まだ理解できなくて呆然としていると付け加えられた。
「帰りに買ったんです。
若干ですが、恥ずかしかったんですよ?」
ど、どうしてそこまで………。
着ていた服をまた着たっていいし、だいたいこういう時って佐々木課長の服を借りるとか………あぁ私に服を着られるのが嫌なのかな。
噂に聞いたことがあった。
佐々木課長は潔癖症で……。
あぁだからご飯も作られるより作りたいのかな。
人が作ったものは食べたくないとかさ。
「なんの沈黙ですか?
もしかして引きましたか?」
心配そうにこちらをうかがう佐々木課長を見ると自分の思考回路が申し訳なくなってくる。
「いえ。
あまりに光栄で固まっていただけです。
あの……体は綺麗に洗いましたけど、そもそも同じ布団に入らせてもらっても大丈夫なんですか?」
潔癖症の人が自分のベッドに他人を寝かすなんて………。
というか、昨日、私はお風呂に入ってもいない格好でベッドを占領した!!!
何に悩めばいいのか、もはや頭は爆発寸前でクラクラしてきていた。
そんな心春に目を細めた佐々木課長がクスクスと笑う。
「添い寝はしてくれることになったのですか?
体は綺麗に洗いましたと言われると、確認しなければいけないのかと思ってしまいますよ?」
さっきより意地悪な顔の佐々木課長。
テーブルを見ればブランデーのボトルが置いてあった。
「の、飲んだんですか?」
「えぇ。少しだけ。
また中島さんに嫌な思いをさせたくはないですから。
今の私なら添い寝できそうじゃないですか?」
うわーそんなこと言われても……。
さっきより酔った佐々木課長は色気がプラスされていて、今の佐々木課長との方が一緒に寝られる気がしない。
とろんと甘い、熱っぽい視線を向けられてドギマギする。
「ハハッ。冗談です。
私はソファで寝ます。
添い寝などと無理難題を突きつけてすみませんでした。」
少し離れたところで頭をくしゃっとさせた佐々木課長が寂しそうに見えて、胸がズキッとする。
それでも何も言い出せない心春に視線を移す佐々木課長はやはり優しかった。
私は佐々木課長から優しさをもらってばかりだ。