添い寝は日替わり交代制!?
「何をおっしゃられてるんですか。
 私、ちゃんと帰るところありますから、ご心配をおかけしてすみませんでした。」

 ど、どうしちゃったんだろう。
 課長ってもっと、なんていうか固くて冗談を言えるような人じゃなくて……。

「それならいいのですが、近頃いつもお疲れのように見受けられたので。
 もしかしたら若い子にありがちな彼氏と同棲したけれど別れたから帰る先が無くなったとか………。」

 佐々木課長に心配されるほど元気がなかったのかと少し反省する。

「いえ。彼氏なんていたことないですから。」

「こんなに可愛らしいのに?」

「!!?」

 本当にどうしたんだろう。
 今日の佐々木課長はおかしいんじゃないだろうか。

 普段ならこんな軽口をたたく人じゃない。

 よくよく観察してみれば、いつもはピシッと着こなしているスーツが若干だが、着崩れていて、髪も思えば整っていない。

 本当に僅かな違いだけれど、佐々木課長にしたら珍しいことだ。

 もしかして……。

「佐々木課長、酔ってます?」

「え?えぇ。先ほど接待が終わりましたが、仕事が残っているので二次会は若い者に任せて来ました。
 元々、お酒の席は苦手ですし。
 すみませんでした。酒臭かったですか?」

 仕事も出来て課長だし年上だし、それなのにこんな新人に敬語とか心遣いをするなんて、いつも感心してしまう。
 こういうところが佐々木課長のモテるところなんだろうけど。

「いえ。佐々木課長が軽口をたたかれるのが珍しいと思ったので。」

「……では軽口ついでに食事をご一緒しませんか?
 飲む席ではあまり食べないので腹が空いてしまって。
 付き合っていただけるならご馳走しますし、愚痴も聞いてあげられるかもしれません。」

「愚痴って……。
 今の私から愚痴を聞いたら彼氏持ちの子への僻みですよ。
 そんなの虚しいし寂しいです。
 それにおモテになる佐々木課長には聞くに堪えないと思います。」

 驚くように目を見開いた佐々木課長の目が柔らかく細められた。

「大丈夫です。
 私も彼女いたことないんで。」

「はい?」

 そんなわけない。
 こんな好条件の人を放っておくわけがない。
 もしそうだとしたら、よっぽど何かどこかに欠陥があるとしか……。

「………すみません。
 今のには嘘がありました。
 でも少なくとも今はいません。」

「フ、フフフッ。
 佐々木課長が冗談なんて新鮮です。
 じゃたっぷりじっくり愚痴を聞いてもらいますので、覚悟してくださいね。」

「ハハハッ。怖ろしいな。」

 私の隣で笑って髪をかきあげる佐々木課長がキラキラしていて、思わずときめいてしまった。

 目の保養。目の保養。
 だいたい、いつもこうなら話しやすいんだけどなぁ。
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