添い寝は日替わり交代制!?
8.陽菜との話し合い
佐々木課長の手を煩わせたくないし人様のキッチンを使うのも気が引けてコンビニで朝ごはんを調達することにした。
一応、出て行く時には佐々木課長の部屋をノックして「行ってきますので」と声をかけた。
手の中には鍵。
佐々木課長のマンションの鍵。
最初に借りた物をそのまま私が使っていいということになった。
「合鍵………なんだよなぁ。」
合鍵という響きが甘美な気がして気が引ける。
まじまじと鍵を見つめてからカバンにしまった。
陽菜からはメールが来ていた。
『2日連続で外泊するなんて心配だよ。
どうしたの?大丈夫?』
そうだった。
電話したのに佐々木課長のマンションに泊まるとは伝えなかったんだった。
『返信遅くなってゴメンね。
大丈夫だよ。
先輩の家に泊めてもらったの。
今から帰るね。』
話し合わなきゃ。
緊張しつつアパートへ向かった。
「心春ー!おかえり!
大丈夫だった?先輩の家?」
部屋には……陽菜だけで彼はいなかった。
「ごめんね。心春。
もしかして彼がアパート来るの嫌だった?」
「え?」
部屋を見回していた視線を陽菜に合わせると眉尻を下げた陽菜が言葉を重ねる。
「彼、いつでも会いたいって言ってくれて私も嬉しかったんだけど、心春は嫌な思いしてたよね。
ゴメンね。もっと早く気づかなきゃダメだよね。」
沈黙は肯定だと捉えたようだ。
心春は違うとも言えなくて何も言えずにいた。
「彼のことは気にしないで!
会う時はアパートじゃないところで会うし。
私、彼より心春の方が大切だよ?」
鼻の奥がキューッと痛くなって、涙がポロポロと流れてしまった。
陽菜はこういう子だった。
言葉が足りない心春の気持ちを汲み取って代弁してくれて、だからルームシェアする時のルールも「言いたいことは言う」にしたんだった。
「ヤダー。泣かないでよ。
こっちまで泣けてきちゃうー。」
陽菜も涙に滲んだ声で、そう言うとどちらともなく抱き合って、わんわん泣いた。