添い寝は日替わり交代制!?
ひとしきり泣いた後に、へへへっと陽菜は笑いながら懐かしむように口を開いた。
「学生の頃みたいね。」
こんなに2人で泣いたのは最初に喧嘩した時。
喧嘩っていうほどの喧嘩は心春の性格上できなかったけど、今みたいに「こう思ってたんでしょ?」と陽菜に言われて、心春が泣けてしまって、つられた陽菜と一緒に声を上げて泣いた。
「……本当だ。」
心春の一言が合図みたいに2人は顔を見合わせると笑い合った。
そうだった。
陽菜はこういう子だから一緒に暮らせるって思ったんだった。
「こっちこそゴメンね。
先輩の家に泊まること連絡しなくて。」
「心配したんだよ!
電話切った時の心春の様子もおかしかったし。
でも……私が悪かったんだけどね。」
またウルッときている2人は顔を見合わせるとプッと吹き出した。
「また大泣き大会になっちゃう。」
「本当。」
「心春、さっきから『本当』ばっかり。」
「本当だ。」
「心春ったら!」
また笑い合うと心につかえていたものが、スーッと消えていく感じがした。
「陽菜が良かったら、彼と一緒に住んで。
私も陽菜に彼ができて嬉しかったもん。
私は一緒に住もうって言ってくれた会社の人にお世話になるよ。」
心からの言葉。
こう思えたのも佐々木課長のおかげかもしれない。
佐々木課長とのことがあったからこそ、こんな風に話し合えた。
「え……だって。
一緒に住もうって言ってくれた会社の人に私みたいに彼氏ができちゃったらどうするの?」
「え……。
佐々木課長は男の人だし。」
「!!!!!
佐々木課長って前に言ってたすっごく厳しい人でしょ!?
しかも男の人のところに泊まったの?
襲われたりしなかった?大丈夫なの!?」
急に前のめりにたくさんの質問をされて、こっちが戸惑ってしまう。
「ちょ、ちょっと待って!!!
佐々木課長は前に話した人だけど、そんな人じゃないよ。」
「…………恋の予感ってこと?」
急に目にハートを浮かべた陽菜が嬉しそうな顔をしている。
恋の予感って………!
「そ、そんなわけないよ!
だってすっごく年上なんだよ?」
「年の差なんて関係ないでしょ?
一緒に住もうなんて誘うってことは向こうもそれなりの気持ちだろうし。
何より心春が佐々木課長と住もうと思ったんでしょ?」
確かにそうだ。
自分がよくも知らない人の、しかも異性と住むなんて考えられない。
いくら陽菜と彼のことで困っていたからって………。
「でも!ほら。年の差があり過ぎてお互いになんとも思わないからっていう…………。」
「これだから心春は鈍感なの!
佐々木課長は心春のこと好きなんだってば!」
「なっ………。」
そ、そんなこと断言しないでー!!!
「どうやって一緒に住もうって誘われたの?」
何から説明したらいいんだろう。
「簡単に言えば………帰るのを躊躇していた私をたまたま見かけた佐々木課長が住む代わりに添い寝して欲しいって頼まれたというか………。」
「ちょっと!!
重要なところを端折らないで!!!
心春を帰りにくくした私グッジョブ!!」
「ちょっと!なんで!
私、悩んでたのにー!」
思わずむくれると陽菜はまた笑った。
「ゴメンってば!
でもそれがなかったら佐々木課長のビックリ提案もなかったわけでしょ?」
「そりゃそうだけど………。」
それに佐々木課長のマンションに住んでもいいって言われてビックリしたけど、一緒にいて嫌じゃなかった自分にもっとビックリした。
「添い寝って……添い寝だけ?」
嬉しそうな陽菜に顔が赤くなってしまう。
「添い寝だけ!
やましいことは天地神明に誓ってないって!」
「何、その文言。」
「だって佐々木課長がそう言ったんだもん。」
「佐々木課長って面白い人じゃない。
なんか安心しちゃった。
付き合ったり進展があったら逐一報告して欲しいなぁ。」