添い寝は日替わり交代制!?
「……腕を離してもらえると助かるのですが。」
控えめな声が聞こえて、重いまぶたを持ち上げる。
目の前は何かに埋もれたようにぼんやりしていて、記憶を辿ると貴也さんと添い寝したような………。
ハッとして、自分の状況を確認すると何かにしがみついて寝ていた。
しがみついている腕を離せば解放されたもう一つの腕が遠のいていく。
貴也さんの腕にしがみついて寝るなんて!!
動揺する心春に冷静沈着な声が少し離れたことろからかけられた。
「中島さんと添い寝をすると決めたことはそれなりに自覚しているのですが、目覚めて目の前にいるのを目の当たりにすると、正直驚きます。」
ひぇ〜。
貴也さんじゃなく完全に佐々木課長だ。
「す、すみません。
本当は添い寝なんて嫌ですよね。」
酔った貴也さんにそそのかされて、ついつい甘えてしまったけど、本当の佐々木課長は嫌だったんだ!!
そうだよ。初めの日だって起きたらいなかったのだって、そのせいなんじゃない?
嫌な汗がどっと出てきて、早くこの場から立ち去りたい気分になる。
「いえ。そんなことは………。」
言葉を濁す佐々木課長に目を向けると、片手を口元に当てた佐々木課長が居心地の悪そうな顔でモゴモゴと続けた。
「こんなに……心地いいことは初めてでした。
目が覚めた時に誰かが……隣にいて。」
な………嘘………。
視界の先の佐々木課長がバツの悪そうな素振りで髪をクシャッとさせると「朝食の準備でも…」と言い残して部屋を出て行った。
残された心春は呆然としたままベッドから出られずにいた。
昨日の好きって気遣いだけじゃないのかも!?
加速するドキドキでうるさくて考えがまとまらない。
いや、だって、待って。
いくらなんでもそれは恐れ多いでしょ。
だってあの佐々木課長だよ?
彼女なんて選び放題だよ。
そうは思っても色んなことが自分にとって都合がいい方へ考えてしまう。
いや。だから、ちょっと待って!
都合がいい方へって、佐々木課長が私のこと好きだったら都合がいいの!?
今度は自分の考えに慌てふためいて、落ち着くどころか動揺は止まらない。
どうしよう。
今さらだけど、私って佐々木課長のこと好きなのかな。