添い寝は日替わり交代制!?
恐る恐る部屋を出ると、いつの間にかスープとベーコンエッグが出来ていて、サラダの器を手にした佐々木課長が振り返った。
「パンは焼く派ですか、焼かない派ですか?」
「焼いてバターを……というか自分でやります!」
では、冷蔵庫の左端にバターが入っています。という佐々木課長の助言を受けて冷蔵庫のドアを開ける。
綺麗に整理された冷蔵庫の左端にバターを発見した。
何を話していいのか分からなくて黙々と準備をする。
こんな私といて居心地がいいなんてことあるのかな。
私って職場で佐々木課長と二人っきりの時ってどうしてたっけ?
ぐるぐるする頭に、佐々木課長の声がした。
「中島さん?聞こえてますか?」
「え?あ、はい。すみません。
ぼんやりしてました。」
「また酔っ払って問題を先送りにしたようです。」
「え?何のことですか?」
「中島さんは今後のことを詰めて話したいと思われていますよね?」
普通に中島さんって呼ばれている。
酔った時のことは覚えてないってことだよね。
それに私も今の佐々木課長を貴也さんなんて呼べない。
そして、佐々木課長は私の思いを分かってくれていたんだ……。
テーブルについた佐々木課長が口を開いた。
「私も話し合わなければと思っていました。
定期。交換しましょう。」
「そ、それは………。」
心春と陽菜がシェアしていたアパートは会社から佐々木課長のマンションを通り越した数駅先の場所だった。
だから住所を変えずに佐々木課長のマンションに住んだとしても定期はそのまま使えるのだ。
ただ佐々木課長のマンションの最寄駅と、心春が通っていた路線は少し離れていた。
最寄駅が徒歩5分くらい。
心春の路線までは15分くらいだ。
「そこまでしてもらうわけにはいかないです。」
「では、朝食はどちらが作りますか?
私は中島さんにお願いしたいです。」
「もちろんです!」
佐々木課長から頼まれるなんて、こちらからお願いしたかったのに。
「朝食を作る側が近い駅の方がいいと思います。
色んな片付けもあると思うので。」
「な……。ダメです。そんなの。」
「では私が朝食も作ります。」
「そ、それもダメです!!」
「では朝食をお願いしますので、定期も交換してくださいね。」
「う…………。」
ものすごく言いくるめられた気がする。
こんな風だから、どうしてそこまでしてくれるんだろうって思っちゃうのになぁ。
そこまで考えて不意に昨日の「こはちゃん。好きです」が思い出されて顔が熱くなるのを感じた。