添い寝は日替わり交代制!?
14.話しやすい宇佐美くん
「いらっしゃい。」
ゆるい格好をした宇佐美くんに出迎えられて目を丸くした。
アルバイトとはいえ、職場ではスーツを着こなしている。
スエットの上下の宇佐美くんに新鮮な気持ちと、やっぱり若いなぁとあまり変わらないはずの年齢に若干の気後れを感じた。
促されて入ったアパートはワンルームの年相応なアパートでホッと息をつく。
佐々木課長のマンションは別格過ぎるんだよね。
きっとお金持ちなんだろうなぁ。
ぼんやりしていると、宇佐美くんが覆い被さるように迫ってきて思わず身を固くする。
背中の方からガチャという音がして、玄関の鍵を閉めたのが分かった。
鍵よ!鍵!!
玄関の鍵はしないと物騒だからね。
動揺する心春を置き去りに宇佐美くんは至って普通だ。
1人動揺しているのが恥ずかしい。
「さて、どうしますか?
俺、いつも飯は外食かコンビニで。
食材もないし、調理器具は一通りはありますけど………。」
男の人の一人暮らしって感じだなぁ。
「じゃ買い物行ってきます。」
荷物だけ置かせてもらって再び出て行こうとすると呼び止められた。
「俺も行きますよ!
と、いうか俺の方が年下なんですから、やめてくださいね、敬語。」
人懐っこく笑う宇佐美くんにドキッとする。
私、誰にでもドキドキしちゃうのかな。
宇佐美くんに佐々木課長のこと勘違いって言われたのもあながち間違いではない………。
ううん。
でもだって男の人に免疫ない上によりによってこの2人……。
「ねぇ。中島さんって女ばかりの姉妹?」
「え……どうしてそれを。」
「やっぱり。
男慣れしてなさそうな初々しい感じがしたから。
そんなんじゃ添い寝なんかしたらドキドキして好きかもって勘違いしちゃうんじゃない?」
う……。
的確過ぎて反論できない。
不意に隣を歩く宇佐美くんが近づいてきて、仰け反るように避けてしまった。
その動作に「おもしろっ」と笑われた。
「宇佐美くんは距離が近いから余計に緊張するんです!」
「ハハッ。
さっきも玄関のわざとなのに、固まってるから可愛いって思った。」
わざと!
宇佐美くんって!!!
「ほら。俺の方がタメ口になってるよ?
俺より年上でしょ?中島センパイ。」
ムムムッ。
「会社では『僕』って言う可愛い宇佐美くんじゃなかった?」
そう宇佐美くんは長身なのに童顔で、サラサラの髪がなびく度にお姉さま方がキャーキャー言うようないわゆる癒し系の可愛い年下男子だ。
………そういう子のはず。
「中島さんが俺のことを知ってくれてるなんて嬉しいな。
オンとオフは使い分けなきゃ。
中島さんはいつも佐々木課長にこき使われてるのに、めげない人だなぁって思ってました。」
オンとオフかぁ。
前から思ってたけど、宇佐美くんって小悪魔だよね。
だからこそ関わりがなかったんだけど。
サラサラの髪をかきあげる仕草がさまになっていて、ふにゃっと笑う童顔に騙されそうになる。
可愛い顔してるけど中身は小悪魔!
動揺を悟られないように普通に返答する。
「佐々木課長にこき使われてるわけじゃないよ。」
「分かってますよ。
佐々木課長は認めてる人にしか仕事は頼まないみたいなので、中島さんは認められてるんだと思います。」
嘘……そんな……佐々木課長に一度もそんなこ言われたことない。
「佐々木課長に認められる中島さんってどんな人なのかなぁって思ってました。」
……そっか。そうだよね。
私じゃなくて、佐々木課長の部下だからだよね。
佐々木課長はやっぱり誰からも特別な目で見られている人だから。
「宇佐美くんって好き嫌いある?」
「いえ。ないです。
ふふっ。敬語抜けましたね。」
楽しそうに笑う宇佐美くんに小悪魔だとしても悪い人ではないんだよね。と、改めて思う宇佐美くんのイメージにホッと心を撫で下ろした。