添い寝は日替わり交代制!?
16.佐々木課長side:居ても立っても
「本当に何考えてるんですか?」
呆れ声を出す宇佐美くんが部屋に戻ってくる。
そのままベッドに横になって眠るようだ。
「あ、中島さんのいい匂いがする。」
嬉しそうな声に気が狂いそうになるが、グッと拳を握りしめ我慢する。
殴りかかりたいくらいだけれど、そんなことできる立場じゃない。
自分の立場と言ったら、ただ中島さんの上司で強引めに同居人になっただけ。
「俺のこと殴りたいって顔してますよ?」
布団に抱きついたまま目だけこちらに向けた宇佐美くんが口の端を上げた。
面白そうだとからかい半分に言葉を投げて来たことくらい分かっている。
それでも殴っていいのなら殴りたい。
「………中島さんに悪いことはしないって約束です。」
さきほどの抱き締めた光景が嫌でも頭をよぎって奥歯をギリッと噛んだ。
2人は添い寝していたんだ。
もっと近くでベッドを共にして………。
「何もしてないですよ?
何より同じベッドにも入ってませんし。」
本当のことを言っているのか信じていいのか分からずにいると「一緒に寝て何もしないって佐々木課長は聖人ですか?」との声に同じベッドに入らなかったことが本当なのだと悟った。
「大事なものは壊しなくないのです。
宇佐美くんには分からないですよ。」
せっかく中島さんと一緒に過ごす口実を作れて、これから少しずつ信頼関係を築きたいと思っていた矢先に横からさらうようなことをされた。
その行動力と何より若さに醜い嫉妬心を感じる。
「なら断ればいいじゃないですか。
好きな人を他の男に差し出すなんて馬鹿ですよ?」
「誰と一緒に居たいかを決めるのは中島さんだと思いますと言ったのは宇佐美くんです。」
自分はかなりの年上で年の近い宇佐美くんの申し出に引け目を感じてしまったのだ。
中島さんは自分みたいな一回りも年上なんかより若い者同士の方がいいのではないかと……。
「だったら途中で邪魔するようなことしないで、見守ってくださいよ。」
分かっている。
分かっているけれど、中島さんが宇佐美くんと添い寝しているんだと思ったら居ても立っても居られなかった。
気持ちを紛らわそうと酒を煽った。
良くも悪くも酒がきいて今に至る。
「まぁ明日は順番で佐々木課長でいいですけど、次は邪魔しないでくださいね。」
次………。
次もあるのだ。
こんな1日……いや、数時間でも耐えられなかったのに。
そしていつか中島さんに恋人ができるかもしれない。
それが宇佐美くんかもしれないし、別の奴かもしれないが、恋人ができれば同居なんてできない。
自分はどうすればいいのか。
気持ちは伝えてある。
酔った勢いという限りなく卑怯なやり方で。