添い寝は日替わり交代制!?
20.佐々木課長side:洗い流す気持ち
ザーザーと流れるお湯に打たれながら、宇佐美くんが言っていた言葉が頭を巡る。
「一緒に寝ても何もしないって佐々木課長は聖人ですか?」
ため息をつくと、気持ちを吐露するようにつぶやいた。
「…聖人のわけない。」
本当は…。本当は…。
心に浮かぶ思いを押し流すようにシャワーを浴びる。
胸の辺り、ちょうど心春が頭をうずめてきたところに手を当てた。
「中島さんから抱きついてくるなんて…。」
これ以上の気持ちが沸き上がらないように、不甲斐ない自分を消し去れるようにシャワーを冷水に変えて頭を冷やし続けた。
シャワーのおかげで平静を取り戻し体を拭いていて、ふと目に止まったドライヤー。
ポタポタと落ちる滴をざっと拭き取ると心春の元へと足を向けた。
リビングにはいなかった。
時計に目を向ければまだ午前4時前。
おはようにはまだ早かったかもしれない。
部屋に行けばまだ布団に包まったままの心春がいた。
猫みたいだ。
丸くなっている心春はベッドの端から落ちそうなところにいた。
眠っているのなら、起こさない方がいいのかもしれない。
思い直して部屋を後にしようとした耳に小さな声が届いた。
「貴也さん。また出て行っちゃうんですか?」
ぎゅっと胸を締め付けるような声。
愛おしくて、言ってはいけない自分の本心がこぼれ落ちそうになる。
今、言ってしまったら、冗談ではすまされない。
そう思うと口先まで出そうだった言葉を飲み込んだ。
それでも、もう少し…そう酔った時のように中島さんと…。
その思いが自然と呼び名を変える。
「こはちゃん。まだ早いです。もう少し寝た方がいいです。
ですので…。」
「…はい。どうぞ。」
ベッドの奥に移動したこはちゃんから小さな声が聞こえた。
酔っていればなんてことないような気がしていたのに、同じベッドに入ることに些か躊躇してしまう。
ベッドの脇でどうしたものかと立ち竦んでいても仕方ないと、意を決して布団の中に体を滑り込ませた。
自分は酔っているのだと何度も頭の中で唱えながら、そっと隣に丸くなる小さな体に腕を回した。
背を向けていた小さな体が向き直っただけで、胸がドキドキと壊れそうだ。
控えめに抱き寄せるとふわっと甘い香りがして、気持ちを抑えるのに必死にならざるを得なかった。
「あの…くっつくの嫌でしたか?」
「え?」
小さな、でも確かに聞こえた声にドキリとした。
「…くっつきたいんです。ダメですか?」
どう答えたら…。
困惑していると返事も聞かずに小さいそれはくっついてきた。
「貴也さんのにおいって安心します…ね。」
こちらの困惑は置き去りに胸の中のお姫様は眠りについてしまったようだ。
声が尻すぼみに小さくなった後に気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
「昨日は遅かった上にまだ早かったから…。
それにしても…。」
こっちの気も知らないで…と、ぴったりとくっついている腕の中のお姫様を少しだけ憎らしく思った。
それでも、抱きついてきてくれたことは戸惑いとともに、戸惑い以上の幸福感を感じて自分も目を閉じた。
夢でもいいから覚めないでくれと思いながら。
「一緒に寝ても何もしないって佐々木課長は聖人ですか?」
ため息をつくと、気持ちを吐露するようにつぶやいた。
「…聖人のわけない。」
本当は…。本当は…。
心に浮かぶ思いを押し流すようにシャワーを浴びる。
胸の辺り、ちょうど心春が頭をうずめてきたところに手を当てた。
「中島さんから抱きついてくるなんて…。」
これ以上の気持ちが沸き上がらないように、不甲斐ない自分を消し去れるようにシャワーを冷水に変えて頭を冷やし続けた。
シャワーのおかげで平静を取り戻し体を拭いていて、ふと目に止まったドライヤー。
ポタポタと落ちる滴をざっと拭き取ると心春の元へと足を向けた。
リビングにはいなかった。
時計に目を向ければまだ午前4時前。
おはようにはまだ早かったかもしれない。
部屋に行けばまだ布団に包まったままの心春がいた。
猫みたいだ。
丸くなっている心春はベッドの端から落ちそうなところにいた。
眠っているのなら、起こさない方がいいのかもしれない。
思い直して部屋を後にしようとした耳に小さな声が届いた。
「貴也さん。また出て行っちゃうんですか?」
ぎゅっと胸を締め付けるような声。
愛おしくて、言ってはいけない自分の本心がこぼれ落ちそうになる。
今、言ってしまったら、冗談ではすまされない。
そう思うと口先まで出そうだった言葉を飲み込んだ。
それでも、もう少し…そう酔った時のように中島さんと…。
その思いが自然と呼び名を変える。
「こはちゃん。まだ早いです。もう少し寝た方がいいです。
ですので…。」
「…はい。どうぞ。」
ベッドの奥に移動したこはちゃんから小さな声が聞こえた。
酔っていればなんてことないような気がしていたのに、同じベッドに入ることに些か躊躇してしまう。
ベッドの脇でどうしたものかと立ち竦んでいても仕方ないと、意を決して布団の中に体を滑り込ませた。
自分は酔っているのだと何度も頭の中で唱えながら、そっと隣に丸くなる小さな体に腕を回した。
背を向けていた小さな体が向き直っただけで、胸がドキドキと壊れそうだ。
控えめに抱き寄せるとふわっと甘い香りがして、気持ちを抑えるのに必死にならざるを得なかった。
「あの…くっつくの嫌でしたか?」
「え?」
小さな、でも確かに聞こえた声にドキリとした。
「…くっつきたいんです。ダメですか?」
どう答えたら…。
困惑していると返事も聞かずに小さいそれはくっついてきた。
「貴也さんのにおいって安心します…ね。」
こちらの困惑は置き去りに胸の中のお姫様は眠りについてしまったようだ。
声が尻すぼみに小さくなった後に気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
「昨日は遅かった上にまだ早かったから…。
それにしても…。」
こっちの気も知らないで…と、ぴったりとくっついている腕の中のお姫様を少しだけ憎らしく思った。
それでも、抱きついてきてくれたことは戸惑いとともに、戸惑い以上の幸福感を感じて自分も目を閉じた。
夢でもいいから覚めないでくれと思いながら。