添い寝は日替わり交代制!?
 朝起きると当たり前だけれど宇佐美くんのアパートだった。
 転げ落ちてしまったのか、宇佐美くんは床の上で寝ている。

 なぜだか落ち込んでいる心に佐々木課長がまた迎えに来てくれることを期待していたのかと虚しくなった。

 だいたいどちらと添い寝してもドキドキもするし、思ったより普通に眠れちゃう自分が佐々木課長に迎えに来て欲しいなんて期待することが間違っている。

 気を取り直してベッドから出ようと体を起こすと宇佐美くんと目が合った。

「おはよ。」

「おはよ…。ふふっ。」

「なんですか?」

 宇佐美くんは笑われて少しだけムッとしている。

 それがまた…。

「かわいい。髪の毛はねているよ。」

 頭に手を置いた宇佐美くんが珍しく頬を赤らめると、ますますかわいかった。
 その宇佐美くんが手を伸ばし、心春の手をつかんだ。

「かわいいって男に言っちゃダメですよ。」

 つかまれた手に一瞬ドキッとしつつも、すねたような宇佐美くんがまたかわいらしい。

 まだ髪をぴよんとはねさせたままの宇佐美くんが続けて口を開いた。

「一緒に過ごしてみてどうでした?
 佐々木課長のところへなんて行かなくても毎日俺のところでもいいんですよ?」

 毎日…宇佐美くんのところ…。

 確かに宇佐美くんといるとリラックスできるし、何より楽しい。
 対して佐々木課長といると申し訳ないって思ったり緊張することの方が多い気がする。

 そこまで考えてふっと佐々木課長の顔が浮かんだ。
 それはたまに見せるどこか寂しそうな顔だった。

 加齢のせいで人肌恋しくてと言っていた佐々木課長。

 昨晩はどうしたんだろう。
 別に心配しなくたって、今までだって1人で寝ていたんだろうし…。

 佐々木課長への心配は宇佐美くんの声に遮られてハッとする。
 どうして佐々木課長の心配なんて。




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