添い寝は日替わり交代制!?

 心地よい夢の世界から現実に引き戻される。

「中島さん。
 コーヒーは美味しい時間が決まっています。
 そして15分という貴重な時間を無駄にしています。」

 ハッとして目を覚ますと冷めた目の佐々木課長が立っていた。
 綺麗な顔立ちと長身の威圧感。

 うわーうわー。
 よりによって佐々木課長に見つかるなんて。

「す、すみません。
 すぐにお持ちします。」

 11時に戻ると言えば必ず11時に戻ってくる。
 どんな体の構造をしているんだろうって不思議になるくらい正確だ。

「コーヒーは大丈夫ですので、
 よだれを拭いてから職場に戻って下さい。」

「ひゃぁい。」

 恥ずかし過ぎる指摘に変な返事をしてしまい、余計に顔が赤くなる。
 佐々木課長はそのまま席に戻っていった。

 コーヒーポットは空っぽで洗ってあった。
 他のコーヒーも持っていってくれた上に、片付けまでしてくれたんだ。

 佐々木課長はミスをしてもガミガミ怒ったり怒鳴り散らしたりはしない。
 静かに間違った部分を指摘して、なんなら今みたいに何も言わずにやってくれたりする。

 それが逆に怖いというか、自分が悪いことをした自覚があればあるほど、怒られた方がどんなに楽か……と思ってしまうこともあった。

 よだれを拭いてから職場に戻るとちゃんと頼まれた人にコーヒーが渡されている。

 欲しがる人は毎日違うのにどうして分かっちゃうんだろう……。
 佐々木課長が「コーヒーいるって言った人」なんて聞くとは思えない。

 改めて佐々木課長の超人ぶりに驚きながら席に着いた。

 席からそれとなくコーヒーを飲む人たちを視界に捉えるとコーヒーを飲む度に至福の顔をしていた。

 いつもの光景だ。
 それが心春には嬉しかった。

 だからこんな雑用を頼むなんて!とは到底思えなかった。

 もちろん佐々木課長も例外ではなく、ほんの少しだけ頬が緩むのを見て、その顔のままでいてくれたらいいのに……と毎日のように思って………。

 !!!!!

 そうだった。
 昨日のことを夢だと思わないんだったら、酔った佐々木課長の方が格段に柔らかくて優しかった。

 ……毎日のコーヒーにアルコール入れたい。

 あぁ仕事中に酔っていたらダメか。
 でもその方が絶対にみんなと打ち解けられるし、このピリピリした雰囲気もなくなるのに!
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