添い寝は日替わり交代制!?
「陽菜さんと楽しめましたか?」

 優しい微笑みを向ける佐々木課長…というか貴也さん。

 私生活では酔っていなくても『貴也さん』と『こはちゃん』ということになった。
 確かに2人の時は優しくて甘い感じで貴也さんだった。

「はい。あの…。
 お言葉に甘えて夕食まで済ませてきて…。」

「えぇ。楽しんでこられたのなら良かったです。」

 前みたいに「こはちゃんがいなくて寂しかった」なんて言ってくれるわけないよね。

 ガッカリする心春に貴也さんが手招きする。

「駄々っ子でも呆れませんか?
 もっと側に来てくれませんか?」

 お伺いを立てるような声で言った後、手で顔を覆ってしまった貴也さんを愛おしく感じた。
 その気持ちのまま、ソファに座る貴也さんの隣に座ると緊張しつつも抱きついた。

 貴也さんがハッと息を飲んだのが伝わってきた。

 それがなんだか嬉しかった。
 いつもは寝ている貴也さんに勝手に抱きついているから。

「いつもくっついてきてくれますね。
 嬉しいですけど、ちょっと憎らしいです。」

 憎らしい…って何が?
 というより、いつもって…。

「寝てるフリは案外つらいんですよ?」

 苦笑する貴也さんと正比例しているみたいに自分の顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。

 こっそり抱きつくなんて子どもみたいじゃない!
 しかもそれを全て知られていたなんて。

「白状すると…大事にしたくて、こはちゃんのことをどう扱っていいのか困っています。」

 え…どういう…。

「あの………キス…はしても嫌いにならないですよね?」

 な……。
 そんなわけない。
 そんなわけないのに、なんて言えばいいのか分からない。

「毎日、毎日、こはちゃんを腕に抱いて眠れて幸せです。
 でもどうしても欲が出てきてしまって…。
 私も男ですので……。」

 どうしよう。
 なんて答えていいのか分からないのに、泣けちゃいそうで…。
 私は陽菜に言われた通りすごく大事にされていたんだ。

「こはちゃん?
 こんな話、嫌でした?
 すぐにでも…その…あれだったんですけど、平日に何かしでかしてしまっては、修復する時間も取れないと思いますし…。」

 貴也さんの話を聞けば聞くほど、鼻の奥がツンとしてしまって、ぽろぽろと涙がこぼれてしまった。

「すみませんでした。泣かないでください。」
 って心配そうに訴える貴也さんがなんだかおかしくて今度は笑えてしまった。

「え?笑っているんですか?」
 って動かす口をふさぐように自分の唇を重ね合わせた。

 ドキドキする心臓は口から出てしまいそうだったけど、キスしても嫌いにならないかって質問になんて答えていいのか分からなかった。

 ただただ嫌いになんてならないって伝わればいいのにとそればかりを思っていた。




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