添い寝は日替わり交代制!?
35.貴也さんの答え
「こはちゃん。
遅くなってすみません。」
声に顔をあげると申し訳なさそうな貴也さんがいた。
私は待ちくたびれて寝ていたみたいだ。
「………たか……やさん。お疲れ様です。
ご飯まだですか?温めますね。」
顔を見れずに立ち上がるとその腕を引かれた。
「こんなこと言える資格はないかもしれませんが、抱きしめていいですか?」
資格って何?
そんなこと言わないでという気持ちと色々な不安から何も言えずに自ら貴也さんにしがみついた。
貴也さんからも回された腕がきつく体を抱きしめて、このままでいられたらいいのに……と余計に寂しくなった。
「ご飯温めます。」
小さくそう言うとキッチンへ逃げるように貴也さんから離れた。
自分から離れた体が寂しくてつらかった。
用意した食事に手をつける様子もなく貴也さんはかしこまって話し始めた。
「本来ならそれ相応の時間を取って対応するのが正しいと思いますが……。」
堅苦しい言葉が私と貴也さんとの間に壁を作っているみたいに距離を感じた。
もう前みたいに和やかな雰囲気で過ごせる時間は戻ってこないんじゃ……。
不安に飲み込まれそうになる心春の前にコトリと何かが置かれた。
「開けてみてください。」
小さな箱。
それを手に取ると震える手で箱を開いた。
貴也さんの顔を見ることができずに、ただただ箱の中身を見つめていた。
そこへ貴也さんから声がかけられた。
いつもの優しくて柔らかくて、でも今は重みのある声だった。
「結婚してください。」
小さな箱が急にずっしりと重く感じられて、思わずテーブルに置いた。
顔が上げられない。
そしてすぐに出てこない返事。
代わりに貴也さんが口を開いた。
「私はこはちゃん以外、考えられないです。
まだ好きだと伝えたばかりで戸惑うと思います。
しかし私にはこれしか考えられませんでした。」
俯く心春の手にそっと貴也さんの手が重ねられた。
「ついてきて欲しいです。
恋人として言うセリフとしてはあまりにもこはちゃんの人生を変えてしまいます。
だから………。」
いつも私のことを考えてくれている。
涙が出そうになりつつも、思ったことが口から出てた。
「遠距離恋愛という考えはなかったんですか?」
貴也さんの重ねられた手。
微かに震えていて、真剣さと緊張が伝わってくる。
だからって今の私には話が飛躍し過ぎていた。
「もうあんな思いはこりごりだと言いましたよ?
それに知ってしまった温もりは離したくないと思うのが人間というものです。」
そんなよく分からない理由で……。
「だって私では佐々木課長に釣り合わないから……。」
改めて目の当たりにした佐々木課長と私の関係性。
そのことが今さらながらに不安を煽る。
「それはこちらのセリフです。
こはちゃんはまだ若い。
年の差にどれほど私が心砕いたか。」
重ねられた手に力が入った。
その手をつかむことができたらどんなに幸せか……。
返事をできないでいる心春に貴也さんが声を落として告げた。
「すみません。
問い詰めるように答えをもらうつもりじゃないんです。
考えて、こはちゃんの答えを下さい。」
重ねられた手は離されて「食事にしましょう」と促された。
私だって貴也さんと一緒にいたい。
それなのに「はい」の二文字は口から出ることはなかった。
遅くなってすみません。」
声に顔をあげると申し訳なさそうな貴也さんがいた。
私は待ちくたびれて寝ていたみたいだ。
「………たか……やさん。お疲れ様です。
ご飯まだですか?温めますね。」
顔を見れずに立ち上がるとその腕を引かれた。
「こんなこと言える資格はないかもしれませんが、抱きしめていいですか?」
資格って何?
そんなこと言わないでという気持ちと色々な不安から何も言えずに自ら貴也さんにしがみついた。
貴也さんからも回された腕がきつく体を抱きしめて、このままでいられたらいいのに……と余計に寂しくなった。
「ご飯温めます。」
小さくそう言うとキッチンへ逃げるように貴也さんから離れた。
自分から離れた体が寂しくてつらかった。
用意した食事に手をつける様子もなく貴也さんはかしこまって話し始めた。
「本来ならそれ相応の時間を取って対応するのが正しいと思いますが……。」
堅苦しい言葉が私と貴也さんとの間に壁を作っているみたいに距離を感じた。
もう前みたいに和やかな雰囲気で過ごせる時間は戻ってこないんじゃ……。
不安に飲み込まれそうになる心春の前にコトリと何かが置かれた。
「開けてみてください。」
小さな箱。
それを手に取ると震える手で箱を開いた。
貴也さんの顔を見ることができずに、ただただ箱の中身を見つめていた。
そこへ貴也さんから声がかけられた。
いつもの優しくて柔らかくて、でも今は重みのある声だった。
「結婚してください。」
小さな箱が急にずっしりと重く感じられて、思わずテーブルに置いた。
顔が上げられない。
そしてすぐに出てこない返事。
代わりに貴也さんが口を開いた。
「私はこはちゃん以外、考えられないです。
まだ好きだと伝えたばかりで戸惑うと思います。
しかし私にはこれしか考えられませんでした。」
俯く心春の手にそっと貴也さんの手が重ねられた。
「ついてきて欲しいです。
恋人として言うセリフとしてはあまりにもこはちゃんの人生を変えてしまいます。
だから………。」
いつも私のことを考えてくれている。
涙が出そうになりつつも、思ったことが口から出てた。
「遠距離恋愛という考えはなかったんですか?」
貴也さんの重ねられた手。
微かに震えていて、真剣さと緊張が伝わってくる。
だからって今の私には話が飛躍し過ぎていた。
「もうあんな思いはこりごりだと言いましたよ?
それに知ってしまった温もりは離したくないと思うのが人間というものです。」
そんなよく分からない理由で……。
「だって私では佐々木課長に釣り合わないから……。」
改めて目の当たりにした佐々木課長と私の関係性。
そのことが今さらながらに不安を煽る。
「それはこちらのセリフです。
こはちゃんはまだ若い。
年の差にどれほど私が心砕いたか。」
重ねられた手に力が入った。
その手をつかむことができたらどんなに幸せか……。
返事をできないでいる心春に貴也さんが声を落として告げた。
「すみません。
問い詰めるように答えをもらうつもりじゃないんです。
考えて、こはちゃんの答えを下さい。」
重ねられた手は離されて「食事にしましょう」と促された。
私だって貴也さんと一緒にいたい。
それなのに「はい」の二文字は口から出ることはなかった。