添い寝は日替わり交代制!?
玄関がガチャリと音を立て、佐々木課長が帰ってきたのが分かった。
ドキンと胸が飛び跳ねるのを感じる。
待っている間、顔を合わせたらまず何を言えばいいのか考えていた。
やっぱり謝らなきゃダメだよね。
迷惑をかけたんだから。
思い悩んだ末に決心していた心春の視界に佐々木課長が一瞬、映る。
しかしそれは本当に一瞬で、幻かと思えるスピードでキッチンに向かい冷蔵庫を開けた。
何事かと呆気に取られているとプシュッと小さな音が聞こえ、佐々木課長はものすごい勢いでお酒をあおった。
「ちょ、ちょっと佐々木課長?
大丈夫ですか?
そんな飲み方をすると危険です。」
静止する声が聞こえないのか、一気に飲み干す佐々木課長の喉元が上下するのを何故だか色っぽく感じて目が離せなかった。
飲み終わった佐々木課長と視線が絡まって、凝視していたことに気付く。
ハッとするとバツが悪くなって俯いた。
すると佐々木課長の申し訳なさそうな声がした。
「すみません。ご心配をおかけして。
きっと酔ってないと中島さんに嫌な思いをさせてしまうので早急に飲む必要がありました。」
酔ってないと……嫌な思い??
「それはどういう……。」
確かに昨日の夜といい、お酒をあおった今といい、同じ敬語でも物腰が柔らかいというか……。
職場で自分が思った同じことをまさか佐々木課長も思っていたなんて。
「酔わずに中島さんと話し始めたら、きっと
「ぼんやり座っておられたのですか?
1時間近くを無駄にしています。」
と口にしたと思います。」
いつもの佐々木課長なら言いそうだ。
そして私は猛烈に反省することになるんだ。
私が見るからにしょんぼりしてしまったようで、佐々木課長が優しく付け加えてくれた。
「他人の家で何かやれる方がどうかしています。
私は中島さんの控えめなところに普段もとても助けられています。
しかしそれを口には出せないので……酒の力を借りるしかないのです。」
肩を竦めた佐々木課長に申し訳なく思った。
佐々木課長はこんなにも考えてくれているのに、職場でコーヒーにアルコールを入れたいなんて………。
「私のために酔って下さらなくても大丈夫です。」
そう言う事くらいしか私にできることはなかった。
私の言葉にフッと顔を緩めてくれる佐々木課長はもはや私が知っている佐々木課長ではない。
昨日も思ったこと。
酔った佐々木課長は別人だ。
「お心遣いありがとうございます。
しかし中島さんも私が酔っている方が心を許してくれている気がしますよ?
もしそうなら酔っていた方が自分自身も有難いのです。」
「私が心を許すことに何かいいことなんてありますか?」
佐々木課長は口を開きかけて「それは…」と言い淀んだ。
「……追い追いお話しします。
まずは食事にしませんか?
空きっ腹に酒を入れたので、嫌でも酒が回ってしまって。」
缶ビール1缶だとしてもあんな勢いに任せて空きっ腹で飲んだら、そりゃそうなると思う。
しかもそれを暗に中島さんのためと言われると心が痛かった。