【完】悪魔な天使
「そういえば、あの人は帰って来なかった?」
「"あの人"って、お父さんのこと?」
確か、さっき玄関のドアを叩き鳴らしていた男性は「父親をナメやがって」と言っていた。
当てずっぽうではあるけれど、たぶんこの推測が正解。
「もうお父さんなんて呼ぶなよ。あんな奴…俺らの父親だなんて認めたくない。」
ここまでの会話で、ある程度の察しがついてしまった。
もしかしたら…
自分とお兄ちゃんは実の父親から暴力を受けているのではないだろうか。
所謂、虐待ってやつを。
「帰ってきたよ。でも言われたとおり家には入れなかった。」
「よかった。ナオは偉いな。怖かったろ?」
「全然!へっちゃらだよ。」
「よし、じゃあ偉かったから唐揚げもやるよ。」
「だからお兄ちゃんが食べていいって言ってるのに!」
だんだん、この役にも入り込めてきた。
お兄ちゃんとも自然に会話ができるようになってきたし。
試練の事も忘れてしまいそうな程だったけど、
このまま何も考えなくてもこの試練、自然とクリアできちゃうのではないだろうか。
だが、それは違った----。
こんな甘ったれた思考回路は、このあとすぐにぶっ飛ぶ事となる。
まさか、ここから"本当の試練"が私に待ち受けているとは思わなかったんだ----。