【完】悪魔な天使
ガチャガチャ…ガシャンッ…----。
「え…?」
玄関の鍵が開かれる音がして、途端に身が凍りついた。
「…大丈夫。入る前にもう一度俺がチェーン掛けたから。」
では何故そう呟いたお兄ちゃんの顔も引きつっているのだろうか。
そう。
だって、
鍵を開ける音だけではなく、ガシャンとチェーンの外れるような音も聞こえたのだから…
「なにが大丈夫だよ?お前等、馬鹿なのか?」
座り込む私達を見下ろすように、
体格の良い中年男性が突っ立っていた。
半袖から伸びる腕には、黒墨のタトゥーが入っている。
「…どうして……」
呆けた口で、お兄ちゃんが呟いた。
「あのなぁ…。今時チェーンなんか外から簡単に開けられるのよ。輪ゴム一本あればね。」
その声に、わなわなと尋常じゃなく震え出すお兄ちゃん。
そんな姿を見て、私の方まで震えが伝達してくるようだった。
「くだらねぇマネしやがって。とりあえずニッパーでチェーンぶっ壊しとくからな。あと、金渡せ。今日お前給料日だったろ?」
「…違う…。給料日は前借りしてるから今月は貰えない。」
「あー、やだやだ。嘘つけよ。じゃあなんでこんな弁当買う金があんだよ!?あぁ"ん?!
どっから沸いてきてんだ?言ってみろ!こんな豚の餌を買うために俺の貴重な銭を使ってんじゃねぇぞ糞ったれ!」
「いい加減にしろって!あんたの金じゃない!!俺の稼いだ金だよ!!俺がどう使おうが俺の勝手だ!!もうお前なんかには絶対に渡さない!!!」
「…お前なんかにだと?…よくわかったよ。
俺もナメられちまったもんだな。
どうやら、聞き分けのないテメェらにはお仕置きが必要みたいだ。」