【完】悪魔な天使
…真っ暗闇の中----。
「おお〜、盛大にやらかしたねぇ。」
遠まきに聞こえてきたのはお兄ちゃんの声…
じゃなくて、デビーの声だった。
「デビー、もしかして私…試練中に死んじゃったのかな?」
「残念。不正解。こんくらいの痛み程度で死ねるなんて思うなよ。」
「は?死ぬのってもっと痛いの?」
「当たり前。何倍も痛くて苦しいよ。」
「まるであんたも死んだことがあるような言い草だね。前世の記憶とか?」
「…教えてあげない。」
「ねぇ、これって本当にただの試練なんだよね?私が生まれ変わったわけでも、ナオくんが実際に生きているわけでもないんだよね?」
「そんな深く考えんなって。ただの試練だよ。」
「なら、なんで?…なんでこんなに痛くて悲しいの…?こんな世界、私にはもう耐えられないよ…!」
「甘っちょろいこと抜かすなよ。
まだ試練は始まったばかりだし。
地獄はもっと恐ろしくて悲惨なところだ。」
「でも…、お兄ちゃんが…」
「なんだよ。別にお前の本当の兄ってわけでもないだろうが。」
「…自分でもよく分かんないけど、どうしてもこの人達が他人だとは思えないんだよ!
あんな酷いことする父親でさえ…昔から知ってる、家族みたいだって感じるの。」
「設定にのめり込みすぎだな。まぁ、そこがお前のいいところでもあるんじゃないの」
「はぁ?…悪魔がきしょいこと言わないで。私にはいいところなんて一つもない。」
「だから、天使だっつってんだろ!
そうやって、自分を全て否定しようとするな。自分が自分を認めてやんないでどうすんだよ。ただでさえお前なんて身内からも友達からも見捨てられてるのに。」
「あの〜、すみません。私、軽く大打撃くらってる気がするんですけど。」
「言いたい事はただ一つ。
もっと強くなれよ!
周りなんか気にすんな。お前はお前で良いだろう。
今だって、ほんとは全身が震えるほど怖かったくせに勇気振り絞ったじゃねぇか。やればできんだよお前は。」
「ああ、なんだ。さっき私の中で謎に鼓舞してきた正体はあんただったのね。
そりゃ試験だから出来る事であって実際は怖いのや痛いのに打ち勝てるわけないじゃん。」
「何言ってんの?お前の中のことなんか知らんがな。さすがの俺様でもお前の精神までは入り込めるかよ。」
「え、そうなの?」
「うん。まぁとにかく、残された5日間。せいぜい選択を間違わずに条件クリアすることだな。」
「…え!?あれ、残り5日!?ちゃっかり期限減らされちゃってない?」
「それは自分が丸一日気絶してやがんのがいけないんだろ?」
「気絶って…」
「さ、雑談おしまい。ほな行くよ。」
「ちょ、待っ…!」